オーダースーツ コンシェルジュ ボットーネです。
お陰様で、本日も全席予約でいっぱいとなり、打ち合わせ、フィッティング、ご納品もラッシュであります。一着一着に情熱を込め、何かを感じていただける服をお届けできるよう、全力で進んでまいります。
さて、先日は講義を受けてまいりました。
「これはねぇ、引き寄せないと。
ほら、こっちにきちゃってるでしょう。」
驚くような丸みが出た服を見て、
言葉が出ない、
これはプレスではない、もはやアートであります。
触れただけで製作者の考えと立体が見え、
的確に施されていく美しいプレス。
イメージを裏切る物腰柔らかな氏の目の奥に、
その外見と相反するようなプロ魂。
先日お伺いしたクリーニングの最高峰、
ウォータークリーニングのナチュラルクリーンですが、
なんとこの度、提携させていただくことができました。
ですから、私たちもお客様の洋服を水洗いクリーニングさせていただくことが可能となりました!
ぜひともあの爽やか〜な香りと、風合い、
ご体感いただきたいですね。
そして私もまた、
ちょっとこれはいくらなんでも、、というレベルの洋服を
厚かましくもご依頼させていただきました、
白のジャケット、でございましたので、こちらはまたご紹介したいと思います。
そんなナチュラルクリーン、中田代表とお電話した際、
何やらプレスの研修をするのだとか。
一体どなたが講師を!??
聞けば、2014年に黄綬褒章を受章された、
あの鈴木洋服店の鈴木誠二氏が講師という。
鈴木先生の技をこの目で見たい!
ということで我々、厚かましくも早速交渉したところ、
中田代表のご厚意で特別に受講させていただくことに!
うーん、それにしてもクリーニング店が鈴木氏を招いての研修とは、
ナチュラル・ここまでやるか!??であります。
あの中川名人も受講。
前回ナチュラルクリーンを訪問した際のプレス職人、中川名人も真剣な眼差し。
沖縄、福井からも日帰りでかけつけた受講生がいたことから、
やはりナチュラルクリーンの洋服に対する情熱が伝わって、熱気に満ちております。
こうして、ところどころ質疑応答が入りつつ講義は進みます。
本日はストライプのスーツが題材。
しっかり地の目を通す!
基礎中の基礎ですが、これが一番大事と再度頭に叩き込み、スタート。
これはバストとウエストとの差寸があまりない方ですね。
と鈴木氏。
素材はもともと平面です。
ですがプレスは、ここはこの部分が膨らむからなぁ、
というように立体で考えていきます。
圧巻の達人アイロンワークの理由は、
立体になった時に高さのある部分やボリュームを出したいポイントを、
そのふくらみを移動させながらかける時にまざまざと見せつけられました。
例えば、この2つの場所。
ダーツを入れてウエストは細くなっていくので、
バストよりもウエストの方がストライプが減ることになります。
細くしたり、大きく見せたり、と色々な考えが合わさって洋服が完成していて、
それをバラすことなくプレスして立体的にしなければいけません。
ゆとりを崩さないように、
丁寧に丁寧に、アイロンで。
意図的にできている空間は、
上にずらして、膨らんだ分量をキープしつつ、
ひょこっと移動させてはアイロンを。
時に上に、
時に左に。
アイロンをかけるためだけにずらして、
また戻す。
理論はそうですが、簡単にできません。
「この部分にダーツが入っています。」
との説明の後には、どのような目的でそのダーツが入っていて、
どのようにプレスするか?という、論理だった講義。
時には小さな紙でその場で簡易型紙を作成して、
どこがどうなっていて、どうすべきか、の解説が。
着ていくうちのこともイメージしていて、
プレスしているのでしょう。
例えばちょっと強めに、
ポケットのふちは着ているうちにあがりやすく、
だから2mmくらい下げておく、
戻りやすいことまでをも考慮したアイロンワーク。
後々のことまで考えて。
服の時間経過を考えて、
仕立ててお渡しして終わりではなく、
着ている最中はもちろん、こうしたら1ヶ月後どうなっているのか?
そこまで考えての2mm。
「裏は余るように作っています。
この辺りに、このくらいの余裕がありますよね」
表生地などは、例えばナチュラルストレッチと呼ばれるような素材もありますが、
基本的に裏地は、伸びません。
だから、前もって少し縦に余らせておきます。
ピンを打ってみるとこのように余ります。
この帳尻を合わせないといけないのです。
「こうやって胸のボリュームのとこまで追い込んでいくんです。」
そしてラペルへ。
衿にアイロンをかける時はスチームをかけないように。
伸ばさずに押し込むように。
ラペルは内側に入れてあげた方が吸い付きますから、
細部にこだわることで、もっと美しく仕上がります。
首にすいつくようにするか、それともゆったりさせるのか、
アイロン先をどこまで入れていくのか、
この部分までは平面で、この部分からは曲線で、
王様の仕立て屋(漫画:イタリア ナポリを舞台に伝説の仕立て職人の弟子、日本人織部の活躍を描くストーリー。)にも絶対に登場していない技のオンパレード。
オープンにして良いのか!という技術が惜しみなく滲み出て、細部の秘伝が語られ、
あっという間の5時間。
ジャケットなんかは3面か4面のパーツでできていますが、
仕立てる前、つまりパーツの状態でアイロンをかけることで立体にしやすい。
これがクリーニングなどのプレスだと、服としてパーツがつながって完成してしまっているので、
特に難易度が高いわけです。
これをかけるのは骨が折れる。
それをスイスイっと。
プレスの魔術師と書いてしまっては安易な表現かもしれませんが、
過言ではありません。
そしてそこには、
感覚とか、だいたいこのくらいは0なんです。
どう立体で完成するかがイメージできているのですね。
その後、パターンへ・・・
こちらも平面ですが、どうやら鈴木氏には立体に見えている模様。
頭の中で立体をイメージして線を引いているのです。
これはもっとこうしたいなぁ、
と描いて線に反映します。
そして、疑って疑って疑って、
究極これでいけるだろう!と線に反映します。
ほらな
よし!
という言葉が出てくるのはそのためです。
仮説を立てて検証を繰り返しているわけです。
鈴木先生もおっしゃいます。
技術者は機能性を求めがち。
見た目、ビジュアルも大事。
教科書通りでいけば、
いせ込みはこの分量で、、
こういう数字や理論をつかえば、単純に服にはなります。
しかしスタイルとトレンドはこれだけでは表現できないということですね。
まるでこれからハンドメイドで仕立てるかのような講義は、
クリーニング店のプレス講義のレベルを遥かに超えています。
鈴木氏の講義は細部まで非常に丁寧な解説が続き、
非常に論理的です。
ボットーネでは創業以来、ただスーツを仕立てるだけでなく、立場や時間、与えたい印象、好み、お持ちのアイテム、似合う色と柄、今と未来のスタイルをトータルで考えた、あなたに最適な戦略的スーツのお仕立てと着こなしをご提案いたしますので、まずはメールで日程をご予約ください。