オーダースーツ コンシェルジュ ボットーネの松はじめです。
相変わらず、麻、そしてシャツ、またタキシードのお渡しが続いておりますが、表参道・南青山界隈も皆様かなり涼しげになってきております。さて、本日はとある注文服の話・・
イタリアのサルト(仕立て屋)で、
注文したよりもタイトに仕上がってきたときの台詞
「君が痩せたら似合う服にしたんだ」
笑い話なのか何なのか、適当な雰囲気でいっぱいの冒頭の言葉は、もちろんイタリアの全てのサルトではありませんが、実話ということだけは間違いない、のです。この話のオチは最後で。
さて、本日はメールにて頂戴いたしましたご質問でございます。
実はこのようなご相談は少なくありません。そこでブログで少し皆様とシェアさせていただきたいと思い、この記事を書いております。
また、結局このお便りを頂戴したことで色々な側面から深く考察することができました。
それは最後までお付き合いいただけるとご理解いただける部分も、もしかしたらあるのかもしれませんが、、、、
兎にも角にも、感謝いたします。
Sさまからのお便り
はじめまして、オーダースーツで悩んでいます40代です。
先日初めて、百貨店のイージーオーダー(8万円)でつくりました。着てみると、でかくてブカブカで腕はダボダボで全然カッコ良くない。
今までアルマーニやランバンの細いシルエットのものを着ていましたが、オーダーならもっと身体にフィットして綺麗なラインのものを期待してたら、全然逆でガッカリしました。初老の店員さんに聞いてみると、このぐらいがいいですよという答えでした。これはこの初老の店員さんの「スーツは大きめで着るもの」というセンスなのでしょうか?
注文の時も、肩幅とウエストと腕など何箇所か簡単に測っただけで、特にシルエットの希望とかを聞かれることもなかったです。「大きめの既製品を買わされた」という悔しさでいっぱいです。
そもそも百貨店のイージーオーダーでは、ブランドスーツのシルエットを期待するのは無理なのでしょうか?フルオーダーなら可能でしょうか?
着てみると、でかくてブカブカで腕はダボダボで全然カッコ良くない。オーダーならもっと身体にフィットしてこのぐらいがいいですよという答え、初老の店員さんの「スーツは大きめで着るもの」というセンスなのでしょうか?
>>このあたりになりますと、その方とお話ししていないので私には何ともいえません。ただ、価値観やセンスはそれぞれですので、そういうことももちろん考えられます。
今回の服も見ていないのと、大きめというのは感覚論なので、やはり一概にはいえないのですが、
そもそも本来の注文服やクラシックな服は、流行とは無縁です。アルマーニなどのプレタ・ブランドは流行服ですから、真逆です。
真逆の要望を実現させるには、要望をしっかり伝え、受け側にも汲み取る能力が問われると思います。
>そもそも百貨店のイージーオーダーでは、ブランドスーツのシルエットを期待するのは無理なのでしょうか?
→どうでしょう?やはりこちらも百貨店の仕組みを熟知しておりませんので、わかりませんが、フィッターの感性、百貨店やお店の考え方、によるのではないでしょうか?
>フルオーダーなら可能でしょうか?
→フルオーダーとなればなおさらフィッターの感性、お店の考え方次第ですので、同じ人員、同じ流れだとしたらおそらく結果は同じかと思います。しかし仮縫いで注文をつけることはできるとは思います。
解決策として、じっくり時間をとってシルエットについて相談に乗ってくれる、そんな自分に合ったお店やフィッターを探す、ということがベストかと思います。相性もあるでしょうし、美容院選びのような感覚ではないかと思いますよ。
一つだけ明確にわかることといたしましたら、そのフィッターさんは、Sさまのイメージしたサイズの服は作れなかった、という事実だけだと思うのです。
ご回答がお役に立てましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
というお便りのやりとりでした。
オーダーで誂える。
生地を選び、シルエットや希望を伝える、
それを汲み取る、そして作る。
なかなか一筋縄でいかないようにも思いますよね。
ですが、自分スタイルが誕生したときの快感、
それを着用したときの快感、
2着目以降の快感、
これらはたまらないものがあります。
合ったオーダー知ると後戻りできなくなるよね、とよくおっしゃられますよ。
ご質問では百貨店オーダーであまりご満足なさらなかったご様子でした。
ですが、百貨店オーダーが悪いわけでは決してないと思います。
百貨店フィッターも十人十色です。
・フィッターの感性
・じっくり時間を取る
・双方向で対話する
こうしたことできっと良い服ができます。
あと、ここからが、お便りのご回答ではない、今ここでこそ書ける部分ですが、
こんなのが結局ナアナアな結果になります。
オーダーで意外と大切なのが、
消費者なんだからちゃんと対応してくれよ!
というスタンスだと、カスタマーと店員の領域を超えられずにいること。
なんだかんだで人と人、
街ぐるみの商売仲間、
まさに商店街やお祭りの発想で挑むのが正解、なんですよね。
私も言葉ではそう言っても、
ついつい佐川〇便の方に配送のことで強く言ってしまったり、
飲食店ですとかホテルマンの対応が今ひとつのとき、なんだかなぁ、と思ってしまうので、
まだまだ未熟な人間だなといつも後で後悔するのですが。
ただ、オーダーで作り上げるというのは、
フルオーダーでなくてイージーオーダーだとしても、作り手優位な部分もあるわけです。
王様の仕立て屋の主人公のような話です。
私が感じるのは、日本で良い服を作れる工房もサロンもどんどん減ってきているわけですから、中立な視点で観て一部の作り手優位になっていくでしょう。
でも、要望って難しいです。
相性もありますし。
わかってるだろうと伝えなかったら、違うものが完成してガッカリといこともあれば、
伝えてた以上に良かったということもある。
やっぱり最初から完璧にはいかないのかな。ですよね。
そこが人間的な面白さ、と割り切るしかないのかな。
格好良い、も、
細身、も、
お洒落~も、
全部理論もありますが、最終的には感性です。
冒頭の話ですが、
イタリアのサルト(仕立て屋)だと、
注文したよりもタイトに仕上がってくることがザラで、
納品のときの決まり文句は、
これ、注文時よりもタイトで前釦がとまりませんけど!と言えば、
「そうだよ、君が痩せたら似合う服にしたんだ」
と言われる、なんて笑えない笑い話があります。(実話なのですが・・・)
さて、この結果は、
実際に、痩せてみたら、確かに格好良かった、という日本人男性の感想だったそうで。
とにもかくにも、このようなお便りを頂戴したお陰で、ここまで深く考え書き、シェアできたわけでございます。
私たちも日々、みなさまのご要望を汲み、
それでいて汲みすぎず私たちのスタイルはしっかり守り、
スタイルを守ることで、それが無理というお客さまももちろんいると思うのですが、
それいいよね!というお客さまをもっと大切にできると思うのです。
そして高飛車な意味ではなく、
共感して下さる方だけに、
さらに期待以上の作品が仕上がるよう、進化できるよう精進しよう、と改めて思いました。
ありがとうございました。
ボットーネでは創業以来、ただスーツを仕立てるだけでなく、立場や時間、与えたい印象、好み、お持ちのアイテム、似合う色と柄、今と未来のスタイルをトータルで考えた、あなたに最適な戦略的スーツのお仕立てと着こなしをご提案いたしますので、まずはメールで日程をご予約ください。