オーダースーツ コンシェルジュ ボットーネの松はじめです。
文字通り急激な冷え込み、スーツは上着を着ていて丁度良いし、カジュアルでもジャケットが恋しい季節です。サロン ボットーネには、熊本、新潟など東京以外からもたくさんのお客様にお越しいただきました。また、海外のお客様も増え、日本の物づくりを世界に発信することができ、大変嬉しいです。みなさま、ありがとうございます。
さて、スーツを仕立てようと思ったとき、一番楽しいのが生地を選ぶことといっても過言ではありません。スーツ生地は、イギリスやイタリアをはじめ、多くのブランドがありその名を覚えるだけでも大変ですね。生地ブランドというと、ゼニア、ドーメル、ロロピアーナなどの名前を耳にされたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この生地のブランドを出しているのところは、2つの種類にわけられます。ミルとマーチャントです。ミルとマーチャント、どのように違ってどのように選べばよいのでしょう?
ミル=織物工場、
マーチャント=商社
となります。
数々のスーツ生地のブランドが存在しますが、全ての生地ブランドが自社工場で織られているわけではありません。むしろ、ほとんど自社では織られていない、ともいえるかもしれません。
ミルは古くからその呼び名で呼ばれ、イギリスを中心とした織物工場にはじまりました。その後イタリア生地の評価が高まると、イタリア生地製造工場もミルと呼ばれるようになります。
代表的なミルは、
イギリス
ウィリアム ハルステッド、テイラー&ロッジ、マーティンソン、サヴィルクリフォード、モクソン
イタリア
カノニコ、エルメネジルド・ゼニア、チェルッティ、カルロ・バルベラ、ロロ・ピアーナ
こうしたミルの特徴は、緑豊かな美しい自然に囲まれた土地にあることです。無数の綺麗な川が流れていて、水質も良いところにあるほうが、良い織物が生まれますから、優秀なミルはこうしたところを押さえているわけです。
イタリアならビエラ、イギリスならウェストヨークシャー、ハダースフィールド。
ミルに対して、商社であるマーチャントは、原材料となる羊毛を買い付け、その後各ミルの得意としていること、キャパなどを把握しながら織らせます。
マーチャントは産業革命後、大英帝国の貿易拡大戦略とともに広がっていきます。
ミルが織り元なら、マーチャントはプロデューサーというべきでしょうか。ファッショントレンドに対応しながら生地を調達し、ブランド化して世界に発信します。
イギリス
ドーメル、ハリソンズ オブ エジンバラ、ホーランド&シェリー、フィンテックス
イタリア
アリストン、カチョッポリ、ドラッパーズ、ユーロテックス
ベルギー
スキャバル
こうしたブランドはマーチャントです。
いかがでしょう?耳にしたことのある生地ブランドがありませんか?
これらの生地はそれぞれ契約しているミルで織られています。そして本社に多種多様、大量の種類の生地をストックし、バンチ(生地の見本帳)を作って世界中に配信します。
マーチャントの方が選択肢が広いことも多いのですが、それはこのようなシステムがあるからなのです。
イギリスのドーメルという生地ですが、フランスのジュールス・ドーメル青年がイギリスから毛織物を輸入して、フランス国内で販売したことがはじまりとなっています。
マーチャント、ドーメルは、世界ではじめて生地の耳に文字を織り込んで、品質保証にしました。現在は創業169年の歴史を持つ老舗マーチャントです。
ところで、こうして辿っていくと、このブランドは○○で織られている!?ということがわかったりと、発見があります。
また、ミルによってカシミアが得意、トロウールはここ、ベロア、ツイード、ヴィキューナ、、素材によって織れるところが限定され、マーチャントの個性をうかがうこともできます。
これだけ色々な生地に、色々な特徴がありますから、選ぶときは、
スーツに何を求めるか?
をしっかり作り手に伝え、一緒に選ぶことが大切です。
ツヤ、
ドレープ感、
強度、
軽さ、
流行、
肌に合うか、
どの国で着るか?
など様々な観点からプロと考えれば間違いありません。
そして対話しているうちに、新しいイメージがわいてきたり、こういうのもいいかも!となるのもオーダーの面白いところです。
好みの生地に触れたときのフィーリングは、まさに出会い。
五感を研ぎ澄ませながら、コミュニケーションを楽しみたいですね。
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カルロ・バルベラ
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