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オーダースーツ 東京ボットーネの松はじめです。

スリーピーススーツスタイルのはしりの一つがこちら、写真のスタイルです。本日はかなりタイムスリップしてみましょう。スーツやタキシードは、歴史が深いですからね。

服の起源は何?と考えると、寒さ対策や肌を守る目的ではないでしょうか?
そこに今度は武器を付けやすくしたり、乗馬しやすくしたりと機能面で優れさせたり、または階級や時代を象徴するものになったりと、発展してきました。
例えばトレンチコートのウエストベルトについている、Dかんという金具は、手榴弾をひっかけるためにつけられています。トレンチを持っている方はぜひ確認してみてくださいね。

ところで、当時は男性も華やかだった衣装、なぜ現代の正装、ブラック基調になったのでしょう…
服が進化していくなかで、特に17世紀、18世紀あたりは、今の洋服、洋装のルーツになっている感があります。この時代のヨーロッパといいますと、イギリスやフランスでは絶対王政が展開されていました。王様が絶対的な権力を持っている究極のピラミッド組織です。

日本では関ヶ原の戦いが行われていたころ、イギリスはチャールズ1世の時代、フランスはルイ14世時代。どちらも海洋国家として、ヨーロッパで最も豊かな国だったそうです。フランス、ルイ14世は、当時を象徴するヴェルサイユ宮殿で、華やかな宮廷生活を繰り広げていました。

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ルーベンスとその妻 自画像

カジュアル着。パッドで張らせた肩が流行。当時は、まだ男性も女性なみのカラフルなお洒落をしていますね。男性服も女性服も、シルエットの差があまりありません。
シルエットはタイトで、ウエスト位置高め、そして17世紀が進むとともに、見た感じの印象に硬さを残しつつも、硬めの芯地を入れることも、少なくなっていきます。

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ウィリアム2世と妃メアリー

やはり男女ともにシルエットは似ていますね。当時は袖に忠誠のしるしをつける伝統があり、公の袖の紋章は身分を表しています。



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オランダ ヘンリー・リッチ伯爵

レース飾りは依然として流行。細かな刺繍が施されています。

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17世紀中期

ジャケット下部を開き、シャツを見せるようになったようです。肩のレースカラーが流行で拡大してきていますね。ブーツもややショートになりました。



やはりこのような衣装には、かなりのお金がかかります。衣装は次々と注文され、一日に何度も衣装替えを行っていたといいます。

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こうした贅沢三昧、豪華主義に飽きてしまったのか、イギリスのフラックという上着や、乗馬服がルイ16世の宮廷で礼服となっていきました。

この頃のイギリスは産業革命の時代突入。
フラックというのはイギリス軍隊の制服の影響を受けた上着とも言われますが、今でもフロックコートは結婚式の新郎様衣装などで着用されますね。


産業革命に伴って、素材もシルクから、ウール、コットンが使われ出しました。しかし、シルクよりもウールは色が地味だったので、ジャケットからチラッと覗くジレ(ベスト)に巨大ボタンをつけて凝ったりしていました。


この頃、マリーアントワネットがイギリス服を取り入れ、早速肖像画に描かせたそうです。それが彼女の首を締めることになるんですが、、、




その後、1789年のフランス革命で、【身分による衣装強制法の廃止】が布告されました。 
ここでやっと階級による服装差別のようなものがなくなるのです。これまで 軽蔑されていたブルジョワジーと、貴族の立場が逆転してきます。
ブルジョワジー の色、それがブラックでした。これまではブラックはブルジョワジー色として軽蔑されていたそうです。

こうしてキュロットをやめ、イギリス兵の服装からきた、ゆったりとした長ズボンをはく革命家たちを、サン・キュロット(キュロットをはかない)と呼べれ、このスタイルが革命の象徴となりました。 

長ズボンはパンタロンと呼ばれ、一般層にも広がっていきます。



ph-22この後、19世紀の幕開け。フランスはコルシカ島で生まれたナポレオン・ボナパルトによるナポレオン皇帝時代。
イタリア、スペイン、ロシアとナポレオン軍の遠征が次々に始まります。
ところで、ネクタイに当たるクラバッタが生まれたのもルイが関わっています。タイが流行し、クラバッタやボウタイが正装となっていきます。
ネクタイ誕生秘話

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巻き方は様々だったようです。


1850年代、写真が発明されました。その当時のフロックコートです。
 
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フロック2

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ご覧のように、ヒザ丈が一般的でした。ウイングカラーのシャツに、アスコットタイ、シルクハットとステッキというスタイルです。ウエストのシェイプ感はなく、優雅に着用していますね。
流行がヒゲにも表れています。


こうして華やかな色遣いの男性服は、ブラックを基調としたカラーが正装となっていきました。



結婚式では、レンタルタキシードというとカラフルなものが多くて、それが衣装のように思われがちですが、午前~午後の正装なら黒、または紺のフロックコートです。

ですが、それを承知で全身ホワイトにされるのは、私はお洒落だと思いますよ。


丈についても、最近は冬コートも、衣装としてのフロックコートも、またスーツまでも丈が短いのが格好良いという風潮もあります。私たちは、大きな傾向としては長めがクラシック、短めがスタイリッシュと捉えています。


個人的には、今年のシングル チェスターフィールドコートはヒザ下ロングのクラシックな仕様で仕立て中です。
ですが、もし私が営業職とか、入社3年目とかだったらヒザ上、ヒヨクではなくセミチェスターで作るかな、と。
逆に一般的な職業だったとしても、40歳を超えてヒザ上のトレンチみたいなのは着ないかな。


結婚式衣装も、冬コートも、ビジネススーツも、丈は印象を変えますから、オーダーでも既製品でも、しっかり店員さんやコンシェルジュに相談して購入しましょうね。



最後に、歴史上のファッションの移り変わりには、そこに多くの血が流れていますから、一見華麗なようで、大変残酷な歴史が入り混じっています。
ファッションの歴史と変化は、この後も時代の変化とともにまだまだ続いていきます。ぜひ次回以降の洋服物語では、19世紀~近代への変化もお届けしていきたいと思います。

 



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